朝いつものコースを走っていると、前方で立小便、すなわち立ちションをしているオッサンが見えました。
最近は、高速道路脇に車を止めて、その車の陰でこっそりする人をたまに見かける程度で、めっきり見る事も減った感のあるあの立ちションです。
コンビニのトイレが開放されてからというもの、路地裏でも見かける事はなくなりました。
子供の頃 「立ちションしたら罰金や」 とよく脅されたものです。
実際に、立ちションという行為は軽犯罪法違反となります。
場所によっては刑法142条の「浄水汚染」(付近に飲料水として使用されている井戸などがあった場合)、同第261条「器物損壊等」(他人の所有物などに放尿した場合)、同第174条「公然わいせつ」(人々が集合したり往来のある場所などで陰部を露出して放尿した場合)によって処断される可能性もあり、更に公衆衛生上も好ましくないため、男女性別を問わず認められる行為ではないとされています。
私の周辺に、立ちションで逮捕された人は存在しませんし、それが犯罪という確固たる意識はありませんでした。
何となく 「してはいけないもの」 程度の認識で、犯罪というよりも 「他人に見られたら恥ずかしい行為」 という感覚の方が大きいような気がします。
冒頭のオッサンも、同様に違反という事よりも、私に見られる事が恥ずかしいと思ったのでしょう。
私が走ってくる事に気付いたのか、少し焦りが見えます。
チラチラとこちらに目をやりながら、でも朝からこんな場所でしなければならなかった程に溜まっていた尿は、そんな簡単には終わってくれないのでしょう、私が近づくにつれ、完全に焦っているのが伝わってきます。
私は、なぜ朝からあのオッサンに気をつかわなければいけないのかと思いながらも、少しスピードを緩めます。
「はよ終わってくれ」
これは私と見知らぬオッサン、2人の脳に同時に過ったセリフです。
このいつもの川沿いのコースは、何本かかかる橋の横に抜け道があるだけで、オッサンの位置はその抜け道からも少し離れています。仮にオッサンの排尿が終了したとしても、私の方向に5mほど来ないと抜け道へ出られません。
ということは、こちらとしても、排尿を終了し、5m手前の抜け道へオッサンが駆け抜けるまでの時間を予測し、そのペース配分で走らなければならないわけです。
それより早くその地点に到達してしまうと、オッサンとすれ違う、又はもっと早い場合には、オッサンの排尿している真横を見知らぬ顔をして通過しなければならなくなってしまいます。
これは避けたい、いや私自身は何ともないのですが、物凄く恥ずかしい思いをするオッサンが可哀想です。
朝からそんなオッサンを見たくありません。ちゅーかなんでそんなとこで立ちションしとんねん!
そんな事を考えながら、ゆっくりと時間調整し、何とか彼の希望通り(推測ですが)、オッサンが抜け道へ駆け上がって行く姿を見た後に問題の現場を通過いたしました。
5mほど行くと、彼の残した排尿跡が見えました。
私の走行するコースを完全に遮断する形で、流れています。
見たくはありませんが、ちゃんと見ないと踏んでしまいます。
私は大きくジャンプし、彼の残した形跡を飛び越えたのです。
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