2016年2月23日火曜日

純喫茶

カフェより純喫茶が好きです。
純喫茶は癒されます。
純喫茶の良さは何と言っても「ゆるさ」だと思います。
良い意味で「ええかげん」であったり、曖昧さこそが、純喫茶の良さではないでしょうか。
隣でタバコを吸っている人がいようが、営業時間が多少過ぎようが、早かろうが、多少お皿にヒビが入っていようが、とにかく何もかもを許し許される、それが純喫茶なのです。
先日、久しぶりに名古屋市西区那古野にある純喫茶「西アサヒ」へ行きました。
西区の那古野あたりは、ケチャップ発祥の店「勝利亭」や海老フライの「はね海老」、串カツ「五條」など、老舗の名店が連なるレトロな街並みを残しつつも、リノベーションされた若者の街へと進化しつつあるとても雰囲気の良い場所です。
「西アサヒ」もそんな那古野の代表格ともいえる、昭和7年創業の純喫茶でした。
前日、伏見のホテルに泊まっていた事もあり、15分ほど歩いて、久しぶりに西アサヒ名物の分厚い玉子サンドを食べに伺ったのです。
お店に着くと、世代交代されたのか、お店はきれいにリニューアルされ、当時の面影はありませんでした。
店内に入り、カウンターの中にいた女性と目が合いましたが、彼女は電話中で、目をそらされましたので、勝手に席に座ろうと1〜2歩あるいたところで客席に座っていた男性に声をかけられました。
5〜6人で座っていたのは先客ではなくスタッフだったようです。
「すみません、まだ営業時間ではないのですが」
時計を見ると11:29です。
営業開始は11:30からのようです。
私は「あそーなん」と言って店を出ました。
そして向かいにある「はね海老」へ入りました。
「はね海老」も同じく11:30からの営業ですが、1分前に来た私を追い返すような事はしませんでした。
もう「西アサヒ」は、当時のゆるい純喫茶ではなくなってしまったのでしょう。
別に1分前でも10秒前でも、営業時間外であることは間違いないわけですから、入れないのは当然の事かも知れません。
だから文句を言っているのではないのです。
別にいいのです。
ただ、冒頭で述べた純喫茶の良さや、私が求める「ゆるい」純喫茶の定義からは外れてしまった事が、とても残念でならないのです。
はね海老で海老フライとクリームコロッケの日替りランチを食べた後、西アサヒへ戻って珈琲を飲む気にはなりませんでした。

ド派手なオッチャン

南海電車に乗っていた時の事です。
どこかの駅について、私の乗っていた車両にド派手なオッチャンが賑やかしく乗って来ました。
派手な帽子に派手なファッション、ピンクの靴下に黄色の靴。
オレンジ色のスーツケースを引きずっています。
「おっとっとっとー!どないなっとんねんコラ、えー」
乗り込む時、そのスーツケースが入口ドア下の段差に引っかかり、つまづいたようにバタバタと乗って来たのです。
ド派手なオッチャンはつまづきふらついたまま、偶然手をついた目の前の窓のロールカーテンを開けようとしています。
ふらついたまま一回も体制を整える事なく、一連の動作の流れてロールカーテンを開けようとしても、うまく開くはずもありません。
そもそもロールカーテンを開けようとしたのは、電車に乗り込む時につまづいた事をごまかすためでしょう。
開ける必要もないのです。
ここまでの流れが一瞬の出来事だったために、乗客は皆そのオッチャンを目で追いながらも、しかし目が合ってややこしい事に巻き込まれないように、いつでも目をそらす事が出来る体制に身構えました。
一瞬で車両内がピリッと張り詰めたような空気となります。
ド派手なオッチャンは、結局うまくロールカーテンを開ける事ができず独り言のように文句を言っています。
「なんやこれは!あけへんやんけ」
電車内は「シーーーーーン」と静まり返っています。
ド派手なオッチャンは、酔っ払っているような感じではありませんが、恥ずかしさからくる一連の動作が全て悪い方向へむいているような印象です。
いても立ってもいられないのでしょう、ブツブツと文句を言いながら、オレンジ色のスーツケースを引きずりつつ、今度は隣の車両へと続くドアへ向かいました。
オレンジ色のスーツケースが何人もの乗客の足にぶつかります。
ドアを開けようとした時、電車が揺れてまたオッチャンがふらついています。
もうこちらの車両ではそのオッチャンを見送りながら複数の人達が笑っています。
そして全員がオッチャンの背中を見ています。
隣の車両へ逃げるように移動したオッチャンは、むこうの車両でも何人もの人の足に、オレンジ色のスーツケースをぶつけながら歩いていっている姿が見えます。
「ぶはあああああああああ」
こちらの車掌で笑い声がこだましました。
「ぶはあああああああああ」
手をたたいて笑い出す人もいます。
なんならスタンディングオベーションしても良かったんじゃないかと思いました。
それぐらい笑えたのです。