ター坊が釣りにはまっていて、よく色んなものを釣ってきては自慢する。
アジ、鯛、アナゴ、太刀魚、ガシラなどこれまで色んな魚を釣ってきた。
「組長!この前ナマズが釣れたんすよ」
「なんて?ナマズ?そらないやろ!」
「ほんまやもん!ほんまに釣れたんやもん」
「なんで海にナマズがおんねん!」
「ほんまやって!嘘や思うんやったら今夜行って確かめたらええやん」
「ほないこか」
釣りは実際そんな経験があるわけでもないけれど、興味あったので行ってみることにした。
海に着く前に釣具屋でエサを買う。
エサはミミズみたいなんに足が100本ほどある気持ち悪い生き物ゴカイ
「うわあああああああ!きもちわるううううう!!!」
「こわいん!?組長こわいん?!」
「こんなんようつけへん!」
「つけたげるやん、な、な、つけたげるから」
ター坊は優しいのでエサも全部つけてくれる。
港について、前回アナゴやナマズが釣れたというスポットへ。
防波堤を何度も乗り越えてやっと到着するような穴場的スポットだ。
周囲は真っ暗、静かに波の音だけが聞こえてくる。
釣りを開始して5分、俺の竿に何か引っかかった。
あまり引いた感触はなかったけれど、確かに何か釣れていた。
「うわあ!なんやこれ!ター坊なんやこれ!」
懐中電灯で魚を照らす。
「組長!ナマズです!これナマズです!」
「うわあ!ホンマにナマズちゃーん!」
「せやろ?ホンマにナマズおるゆーたやろ?」
「これ食えるんか?前どないしたん?」
「前は煮込んで犬に食わせた」
その後何度となくこのナマズが釣れた。
だけど本能的に釣っては捨てていた。こんなん食べたくないし。
アナゴが1匹釣れたのでそれだけはクーラーボックスに入れた。
何ヶ所か場所を変え、最終灯台の近くの防波堤へ。
ここにも誰もいなかったけれど、オッチャンが1人近寄ってきて話しかけてきた。
「なんか釣れまっか?」
「アナゴとナマズしか釣れてません」
「ナマズ?ナマズがおりまんの?海に」
「はい、今日はナマズばっかり釣ってます」
「それナマズちゃいまっせ!ゴンズイちゃいますん」
「ゴンズイ?」
「そーですわそれゴンズイですわ、触ったら死にまっせ」
「え?なんで?」
「毒ありまんねん毒、刺されたら死ぬんですわ」
「!?」
顔を見合す俺ら二人
さっきから何度もゴンズイを触っている。(ター坊が)
二人とも顔が青くなってきた。
前回は、釣って持って帰ったゴンズイを、ター坊のおばあちゃんが煮込んで犬のジンベイに食わせたのだとか。
ゴンズイの毒は死んでも残っているのでホンマに怖いらしい
「おばあも俺もいジンベイも偶然今生きてるんやな」
ター坊が悲しそうにつぶやく
オッチャンが帰ってからは無言の二人。
その後も何回かそのゴンズイがかかったがそのたびに捨てた。
結局アナゴも捨てて帰った。
「俺もうここで釣りすんのやめる。ちゃう場所いくわ」
ター坊がつぶやいた。
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