2014年10月1日水曜日

チャンピックス

駅の近くのカフェへ入り、テラス席でタバコを吸いながら珈琲を飲んでいると、オッチャン2人がテラス席へ入って来ました。
「席空いてねーな」
このカフェは喫煙ルームがテラス席になっていて、3卓12席しかありません。
3卓とも私を含めてオッチャンで埋まっています。(私はオニーチャンですが)
すると、隣の席に1人で座っていたオッチャンが席を立ちました。
「どうぞどうぞ、私はもう出ますので」
こういう喫煙席や喫煙ルームという場所は、どこへ行っても皆がすぐに友達となります。
見ず知らずの人でも男女問わず、すぐに会話が交わされます。
だいたいが喫煙ルームや喫煙席の不便さなどを労わり合う会話なのですが、同じように肩身の狭い思いをしている者同士、友情も生まれやすいのでしょう。
一般的に喫煙席は愛情に満ち溢れているものなのです。
隣の席を立とうとしたオッチャンに、入ってきたオッチャン2人のうち1人が言います。
「実は私は吸わないんです、吸うのはこの人。私は禁煙したんです」
禁煙したオッチャンが得意気に続けます。
「6年前にね、チャンピックスていう薬を飲んでやめたんですよ、なんの苦労もなく」
席を立ったオッチャンは、そうですかそうですかと言いながら行ってしまいました。
得意気なオッチャンは何となく不完全燃焼だったのでしょう。
私が「マジすか!」と声をかけると、「いやマジなんですよ!」と水を得た魚のように、イキイキとこちらを振り返り言いました。
「飲むだけすか?」
「1日2回飲むだけで12週間でやめれるんです、私は8週間でやめました」
「ほぅ」
「53%の人が禁煙に成功してるんです」
「いくらすか?」
「金額は忘れましたけど保険がききますよ」
「へぇ俺も飲んでみよかな」
「私は1日40本ぐらい吸ってたんですけどね、何本ぐらい吸われてます?」
「んー60本ぐらいかな」
「私は40~80本ぐらい吸ってたんですよ、それが全く吸いたくなくなるんですよ」
しかしなぜ喫煙者は1日何本吸っているかを人より多く言いたいのでしょうか。
オッチャンさっき40本ゆーてたがな!
とツッコミそうになりながら「ほぅほぅ」とオッチャンの話に耳を傾けます。
聞くと、会社の部下にもチャンピックスを紹介し、7人が禁煙に成功したとのこと。
その後もオッチャンの禁煙サクセスストーリーは続きました。
1時間ほど喋り続けた後、オッチャンは新幹線の時間だと席を立ちました。
帰り際、私が「どうも」と声をかけると
「もし良かったらチャンピックス!」
と満面の笑顔で手をふり去っていきました。
喫煙席には愛情が満ち溢れています。