2014年5月18日日曜日

敗北感

ホテルをチェックアウトし、とぼとぼと駅に向かって歩いていると、駅前の居酒屋に行列ができていました。
見ると1日限定20食のお得なランチがあるらしく、そのランチ目的の行列ができているようです。
普段から、わざわざ並んでまで食べたいという欲求はないのですが、ただ駅に近いし、なんとなく並んでみたのです。
15分程すると、中から店員が出てきて、ランチの説明をはじめました。
そして限定20食のランチ用の整理券を順番に配りはじめました。
「あらま!私が最後?申し訳ないわぁw、後ろの人可哀想ww」
目の前に1人で並んでいる婦人が、こちらをチラチラ見ながらそう言いました。
どうやら丁度私が21人目だったようです。
後方に並んでいたうちの何人かは、20食が完売となった時点で、帰っていきました。
私は、別に限定ランチじゃなくても、何でも良かったのです。
なので単に席予約だけをし、営業開始まで待つ事になりました。
待っている間、先ほどの婦人の言葉が脳裏を旋回します。
「後ろの人が可哀想www」
可哀想なん?俺
何でも良かったのに、可哀想と言われてしまうと、何か損したような気分になってきます。
私はこの時、何故か敗北感を感じていました。
営業時間となり、整理券を持った人がぞろぞろと入口へ集まりはじめました。
私のように整理券を持っていない人は少数でしたが、持っている人、持っていない人が混合で、受付に集まり、順番に席へ案内されて行きます。
整理券を持っている人は、予め既に料理がセッティングされた席へ案内されます。
その様子は、まるでVIP客を通すような雰囲気です。
整理券を持っていない私達は、普通に席に案内されます。
私は1人だったので、カウンター席に通されました。
カウンターは7人がけでしたが、3人までしか通さないようです。両端は限定ランチの人が座っています。
3席分ぐらいの料理が並んでいます。
私は真ん中です。
先ほどの婦人が、私の左手で既に限定ランチを食べていました。
それは確かに並んででも価値のありそうな物凄い豪華なお膳でした。
これで1000円なら価値があります。
私は同じ1000円の日替り膳をオーダーしました。
少し待って出てきた日替り膳は、限定ランチと比べると、悲しくなるほどに1000円っぽい定食です。
あくまでも比較してなのですが、20人目に並んでいて整理券を勝ち取り、21人目の私を可哀想と言った婦人が食べている限定ランチと、私の目の前にある日替り膳とでは、格差がありすぎて、悲しくなったのです。
隣の婦人と私との差は、単に数秒差で並んだかどうかだけです。
並んでいた時間なんてほぼ差がありません。
なのに私はこのしょぼいランチ、婦人は豪華なランチなのです。
しかも店員もなんとなく彼らにはVIP扱い、我々は庶民扱い、そんな気がしてならないのです。
いや接客はとても良いのですか、そう感じてしまう雰囲気なのです。
婦人は、私の目の前に提供された日替り膳を見て、少し笑いました。
なんなんでしょうかこの敗北感。
売切れた時点で帰っていった人達は、この敗北感を味わった事のある人達なのでしょう。
店側からすると、限定ランチはそれだけ原価も高く、儲けも少ないので、通常メニューをオーダーしてくれる客の方が嬉しいはずです。
ところが客側は、限定ランチはVIPで勝者、それ以外は庶民で敗者、という雰囲気を出しています。
同じ時間並んで、同じ1000円を支払う客なのに、勝者気分で食べる豪華なランチと、敗者気分で食べるごく普通のランチでは、あまりにも格差が大きすぎるのです。
もしもあの豪華な限定ランチが存在せず、日替り膳だけだったとしたら、満足感もあったはずです。
接客も非常に良かったですし、また行きたいと思ったはずなのです。
しかし同価格で、あんな豪華なランチが存在するばっかりに、こんなにも敗北感を味わってしまうと、もう2度と行きたいとは思いません。
今度こそ限定ランチの整理券をゲットして、勝者になってやる!
なんて微塵も思いません。
もうこりごりなのです。