2014年5月11日日曜日

シャン

1人で食事をしていると、様々な人達の話し声が聞こえてきます。
聞く気がなくても、勝手に聞こえてくるのですから仕方がないのです。
先日とある飲食店にて、1人で食事をしていた時の事です。
隣の席に20歳前後の若いカップルが座りました。
彼らはとても仲が良いようで、ずっと喋り続けています。
こういう場合、会話の内容には本当に個人差があります。
今現在、目にしている物を中心に会話する人もいれば、全くそれに無関係な、2人の会話をする人もいます。
彼らは前者の、目の前の事について、常に喋り続ける人達のようです。
お店のメニューに関する事や、味などを常に喋り続けています。
しかし、その内容は本当にイラっとくるものでした。
どうやらこのお店に初めて来たらしく、メニューについての疑問点が多いようです。
先程からメニューの疑問点をずっと彼女に聞いています。
「これってなに?」
「わかんない」
そもそも彼女も初めてなのですから、彼女に聞いたところで解決するはずなんてありません。
なのに彼はずっと質問するのです。
「◯◯なの?」
「そうじゃない、わかんないよ」
こういう人はたまにいますが、明らかに相手がそれについて知っているはずがない事をわかっているのに、質問をしたがるので厄介です。
おそらく「なんだろうね」と、共有したいのでしょうが、私なら「知らん」で終わります。
それが何度も続くと「知らんがな」となり、最終的には「シャン!」となるのです。
「シャン」は「知らん」の「ら」の発音すら面倒なので「ら」を「ャ」と発音する高度な言いまわしです。
「知らん」が「シャン」となった時は、相手がイラっときていると判断できます。
しかし彼女はとても優しいようで、「わかんない」と可愛く返します。
彼はやたらと文句を言いたいようで、料理が運ばれて来るたびに、何かとケチをつけます。
彼氏「なんなのこれ」
彼女「わかんないよ、美味しいね」
彼氏「うん」
うまいんかいっっっ
思わず声に出そうになりました。
美味いのならワザワザ文句を言わなくても良いとおもうのですが、彼は文句を言いたいようです。
そして彼が何かとケチをつけるたびに、彼女は優しく微笑みながら「わかんない」と答えるのです。
久しぶりに忍耐強い女性を見た気がしました。
私ならとっくに「シャン!!!!」と言い放ち「だーっとれ!!!」と文句を言っているはずです。
優しさと愛に満ち溢れ、忍耐強く彼の低脳な会話に付き合ってあげている。
私は今後、彼女をマザーテレサと呼ぶ事にします。
まぁもう二度と会う事はないでしょうが。