2015年2月14日土曜日

テングうどん

長崎の友人が「とても美味しいうどん屋がある」と教えてくれたので、早速行ってみる事にしました。
彼は時々こういう情報をくれます。
こちらとしても、地元住民の貴重な口コミ情報は大変有難いものです。
また、過去にも彼から教えてもらったお店は、どこもとても美味しい印象がありましたので、信憑性も高いですし、楽しみにして行ってみたのです。
彼と別れ、車で30分ほど走ったところにお店はありました。
10台ほどの駐車場は満杯で、駐車場の空きを待っている車まであるほどでした。
そのまま30分ほど待ち、車を停めてお店に入ります。
お客さんは、品のある年配のご夫婦が多く、店内は満席です。
これほどまでに人気なのなら、さぞかし美味しいのでしょう。
アルバイトらしきホールスタッフに、1人だと告げ席を案内されます。
20席ほどあるカウンター席は満席でしたので、9席あるお座敷席へ通されました。
友人からは「天ぷらうどんが美味しい」と聞いていましたので、天ぷらぶっかけうどんを注文しました。
待っている間にも、続々とお客さんが入ってきます。
すると、先ほどのホールスタッフが近寄ってきてこう言うのです。

「カウンターが空きましたのであちらへどうぞ」

私は別にカウンター席を待っているわけではありません。
もう座っているのですから、わざわざ靴を履いてまで、席を変わりたくはありません。
見ると、入り口に3人組のお客さんが入って来たようです。
私が今座っている席は、3人掛けのお座敷カウンターです。
この席をあのお客さんに譲って欲しいのでしょう。
それならそうと言ってくれれば、ホイホイと席を変わります。
なのにあんな言い方をするなんて、まぁでも、ややこしいので黙って席を移る事にしました。
カウンター席へ移ると、ちょうど目の前に厨房が広がります。
厨房を取り囲むような、コの字型のカウンター席となっているのです。
こういうオープンキッチンのお店を見るたびに、中にいるスタッフは、ジロジロお客さんから見られてるわけですから、非常にやりずらいのだろうなと想像してしまいます。
逆に、お客さんからすると、作業全てが見えるわけですから、キチンとやってさえいれば、非常に印象も良くなるでしょうし、また暇つぶしにもなるわけです。
注文したうどんが来るまでの間、厨房内のスタッフ一人一人に目をやります。
男性は1人、残り5~6人は女性スタッフです。
もしかすると、その男性が店主でしょうか。
しかし彼は、フライヤーの前から離れず、ずっと天ぷらを揚げています。
それよりも、うどんを打って切って湯がいてしている年配の女性がいます、もしかするとその女性が店主かもわかりません。
後はアルバイトらしき若い女性ばかりでしたので、どちらかが店主でしょう。
しかし、彼らは作業に没頭しており、お客さんの方は一切見ていませんでした。
そればかりか、お客さんが入って来た時の「いらっしゃいませ」や、帰る時の「ありがとうございました」すら言わないのです。
アルバイトらしきスタッフは言っています。
しかしこの2人は、そちらを見ることもせず、一切言葉は発しませんでした。
となると、ただのアルバイトなのでしょうか。
ひょっとすると、アルバイトらしき若い女性が店主なのでしょうか。
少しすると、うどんが出て来たので、食べて店を後にしました。
私が帰る時も、レジをやってくれた若い女性だけが「ありがとうございました」と言いました。
店を後にして、少しすると、先ほどの友人からLINEが来ました。

「うどんどうでしたか?」
「うまかたで」
「でしょでしょ!店主もいい感じの愛想いいおっちゃんでしょ?」
「あー、あれ店主か、ちょっとテングなってんちゃうか」
「何かありましたか?」
「いやずっと揚げ物だけやっとって、一切ありがとうございましたもいらっしゃいませもゆわんねん」
「あぁテングなってますねそれ」
「まぁあんなけ流行ってたらテングにもなるわなそら」
「確かに」
「味は美味かっただけに残念やな」
「そですね」

人は結局、料理が美味しいというだけではなく、スタッフの接客やお店の雰囲気、居心地、価格、そして店主の人柄などで、再来店するか否かを決めています。
中でも店主の人柄というものは、一番大きな理由となるのではないでしょうか。
例え料理が普通だとしても、店主の人柄が良ければまた行くものです。
料理を食べに行くのと同時に、店主に会いに行きたいものなのです。
店主と友達になればもっともっと通うでしょう。単純なものなのです。
但し、こちら(客側)が店主を友達だと思っていたとしても、店主側は実はあくまでも仕事としか思っていなくて、ただの客だとしか見ていない場合、それが判明していまうと、もう行きたくはなくなります。
そこも単純なのです。