2010年11月28日日曜日

悪夢

幼少期、発熱すると必ずといっていいほど同じ夢を見た。
その夢は、言葉では言い表しようのない実体のない感覚だけの夢で、俺は毎回魘された。
そしてその夢から目覚めたい一心で、叫んだり、親に助けを求めたり、夢遊病のように部屋中の物を投げつけたり、壁に貼ってあるポスターなどを引き裂いたりした。
オカンは毎回そんな俺に「洗面所行って顔洗ってこい!」と怒鳴りつけた。
俺はその度に洗面所へ行き、水を飲んで目を覚ました。
昔から扁桃腺が弱かったので、年に何度も発熱し、その度にこの悪夢に魘され続けたのだ。
まだ小学校低学年の俺が、この夢について何度説明しても親は理解してくれなかった。
いや、今現在でも人に説明しようのない本当に感覚だけの夢なのだ。
俺は当時、自分で頭がおかしいのではないかと真剣に悩んでいた。
生まれてすぐに大病にかかったという事を聞いていたので余計にそう思ったのだと思う。
親も「おまえは頭おかしいねや」と言った。
誰にも理解してもらえない自分だけの悩み、俺はそれ以来誰にも言わずにその夢のことは封印したのだ。
そして大人になり、そんな夢のことなんてすっかり記憶から消えていた。
ところが先日、完璧にこの記憶が蘇ったのだ。
しかも寝ている時ではなく、仕事中にである。
仕事中にふとその夢の感覚が記憶から蘇り、それを何度も何度も脳裏で描くうちにだんだんと鮮明な記憶となって蘇ったのだ。
「こ、これ、これや!」
言葉で言い表すと、だんだんと遠くから音が迫ってくるような、だんだんと音が大きく、近づいてくるような感じ。
物体はない、音に似たそんな何かが迫ってくる、そんな感覚。
色は黒、暗闇だ。
正直怖い、怖い夢、何かはわからないけれど、なんせ怖い夢。
一体なぜ今になって、しかも起きている時にその感覚が蘇ったのかはわからない。
ここ最近のとてつもない大きなストレスが原因なのか、老化なのか。
別に熱があるわけでもないし。

悪夢を検索するとほとんどがPTSDやストレス、薬物が原因と書いてある。
ただ幼少期は別に珍しい事ではないとも書いてあるので、今更ながら悩む必要もなかったのかとも思う。
いずれにしろ、誰に言えずに封印していた悪夢のことを、30年が経過して初めて人に話せたいい機会になったと思う事で納得する事にする。

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