2018年8月26日日曜日

料理写真

ここ数年、インスタ映えインスタ映えと、世間が料理写真に騒がしくなる前は、美味しそうな料理写真を「シズル感がある」などという表現で表していました。
私は仕事で、飲食店のメニューを毎日毎日作成しています。
このシズル感のある美味しそうな料理、今で言うインスタ映えのする料理を考案し、そして実際に料理を作り、そしてその料理を撮影する、という一連の作業を行なっているわけです。
ところが、仕事をいただくお客様が感じるシズル感と、私の感じるシズル感には差があります。
美味しそうな写真が撮れ、自信満々にお客様に見せても、簡単にボツになり、めちゃくちゃ不味そうな写真を使うように指示のある場合もあるのです。
勿論、何とか理解していただこうと、反論はするのですが、お客様ですし、結局その料理が売れなくても、お客様が損をするだけなので、一度言って理解されなければそのまま変な写真を使います。
当然自分では納得のできないものが完成するのですが、仕方ありません、諦めます。
ではその美味しそうな料理写真と、そうではない料理写真との、大きな違いは何でしょうか。
私が考える美味しそうな料理写真とは、単にその料理本体だけではなく、その料理を盛り付けるお皿だったり、またそのお皿が置かれているテーブルであったり、もっと言うと、そのテーブルの向こうの店内の雰囲気、花瓶に飾られた花、窓から見える景色など。
実際にそのお店で、料理に向き合っている人と同じ目線で見えるもの。
それがシズル感だと思うのです。
料理を美味しく見せるためには、それに似合う器と、客席、店内も綺麗に整理されていて、窓からは美しい風景、それらのものすべてが必要なのです。
全てが揃って初めて美味しそうな料理の完成なのです。
いくら良い食材を使用して、美味しい味付けをした料理でも、紙皿やダサい器に盛られていたらどうでしょう。
塩ビのアニメキャラの描かれた器に盛られた料理や、紙皿の料理が美味しそうに見えるでしょうか。
また客席ではなく、蛍光灯で照らされた厨房の台下冷蔵庫の上で撮られた料理写真が美味しそうに見えるでしょうか。
不味そうな料理写真の典型的なパターンは、バックに景色の全くない写真です。
料理だけの、証明写真のような写真。
よく東南アジアへ行った時に、レストランで見かけるバックが真っ白や真っ赤の料理だけの写真です。
あれはダメです。動きもなければ、料理から何のメッセージも伝わって来ません。
ただのカタログにすぎないと感じてしまいます。
写真の撮り方も、これから食べるという臨場感の感じられる角度、言わゆる目線からのアングルが理想です。
変に上からのアングルや、斜めの角度などはあり得ません。

この写真は、私の尊敬する先生の写真です。
この写真のように、目線のアングルで、器、テーブル、そしてその後ろの風景まで、これら全てが揃った写真が理想のインスタ映えにする料理写真と言えます。
料理も美味しそうですし、またその料理を作った人の性格や気持ちまでも感じることができてしまいます。
そしてその後ろの風景を見るだけで、一切手抜きのない、この1回の料理に対する本気度やこだわりを感じます。
料理の向こうに映ってはいけないものがあるから、それを映さないのではなく、そこを整理するという事が大切なのです。

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