2016年2月23日火曜日

ド派手なオッチャン

南海電車に乗っていた時の事です。
どこかの駅について、私の乗っていた車両にド派手なオッチャンが賑やかしく乗って来ました。
派手な帽子に派手なファッション、ピンクの靴下に黄色の靴。
オレンジ色のスーツケースを引きずっています。
「おっとっとっとー!どないなっとんねんコラ、えー」
乗り込む時、そのスーツケースが入口ドア下の段差に引っかかり、つまづいたようにバタバタと乗って来たのです。
ド派手なオッチャンはつまづきふらついたまま、偶然手をついた目の前の窓のロールカーテンを開けようとしています。
ふらついたまま一回も体制を整える事なく、一連の動作の流れてロールカーテンを開けようとしても、うまく開くはずもありません。
そもそもロールカーテンを開けようとしたのは、電車に乗り込む時につまづいた事をごまかすためでしょう。
開ける必要もないのです。
ここまでの流れが一瞬の出来事だったために、乗客は皆そのオッチャンを目で追いながらも、しかし目が合ってややこしい事に巻き込まれないように、いつでも目をそらす事が出来る体制に身構えました。
一瞬で車両内がピリッと張り詰めたような空気となります。
ド派手なオッチャンは、結局うまくロールカーテンを開ける事ができず独り言のように文句を言っています。
「なんやこれは!あけへんやんけ」
電車内は「シーーーーーン」と静まり返っています。
ド派手なオッチャンは、酔っ払っているような感じではありませんが、恥ずかしさからくる一連の動作が全て悪い方向へむいているような印象です。
いても立ってもいられないのでしょう、ブツブツと文句を言いながら、オレンジ色のスーツケースを引きずりつつ、今度は隣の車両へと続くドアへ向かいました。
オレンジ色のスーツケースが何人もの乗客の足にぶつかります。
ドアを開けようとした時、電車が揺れてまたオッチャンがふらついています。
もうこちらの車両ではそのオッチャンを見送りながら複数の人達が笑っています。
そして全員がオッチャンの背中を見ています。
隣の車両へ逃げるように移動したオッチャンは、むこうの車両でも何人もの人の足に、オレンジ色のスーツケースをぶつけながら歩いていっている姿が見えます。
「ぶはあああああああああ」
こちらの車掌で笑い声がこだましました。
「ぶはあああああああああ」
手をたたいて笑い出す人もいます。
なんならスタンディングオベーションしても良かったんじゃないかと思いました。
それぐらい笑えたのです。

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