2015年5月28日木曜日

恋する2人

京葉線に乗っている時、55~56歳のカップルが乗って来ました。
ちょうど2人並んで座れる席がなく、2人は向かい合うカタチで座ります。
彼氏らしきオジサンは私の横に、その彼女らしきオバサンは私の向かい側に座っています。
彼女はしきりに彼氏に何かを話しかけています。
声には出さず口バクで話しかけるのです。
その表情は、とてもイキイキとしていて嬉しそうに見えます。
まるで付き合いい始めた高校生のカップルのようです。
「好きなんやろなぁ」
もう誰が見てもそう思うはずの2人です。
何駅かが過ぎ、彼女の隣に席が空いたので、彼氏が席を移ります。
座ってすぐ2人は手をつなぎました。
歳はとっていますが、とても仲の良い2人です。
少しすると、彼氏が眠り始めたのです。
彼は疲れているのでしょう、本格的に眠ってしまいました。
彼女はというと、同じように目を閉じて眠ったかのように見えるのですが、時たま目を開けて嬉しそうに彼氏の顔を見てまた目を閉じます。
その彼氏を見る表情が、もう彼氏が好きで好きでたまらないという表情なのです。
見ていてこちらがほのぼのとしてきます。
微笑ましいのです。
彼女は何度も何度も目を開けては彼の顔を見て、また眠ったふりをするのです。
「別に寝るふりせんでもえーがな!ずっと起きときーな!」
と言いたくなるのですが、彼が急に目を覚ました時に、目が合うと恥ずかしいのでしょう。
なんという可愛らしい人なのでしょうか。
この2人はきっと夫婦ではないはずです。
そんなものは見ればわかります。
この歳になってこんなラブラブな夫婦なんてあり得ないからです。
いや絶対かというと絶対ではありませんが、その確率は0.158%以下ではないでしょうか。
もし夫婦だったとしたら、拍手を送りたいと思います。

バスの運転手

熊本空港からJR熊本駅を目指すバスに乗った時の事です。
運転手はとても声が小さく、時折マイクで何かを言うのですが、サッパリ聞き取れません。
滑舌も物凄く悪い人のようです。
まぁ別になにを言っているのかなんて興味がないので、そんな事は気にせず、いつもの通り、PCを開いて映画を見ることにしました。
熊本交通センターに着いた時、結構な数の人が降りていきました。
熊本駅はもうすぐです。
熊本駅でも大勢の人が降りるはずです。
「次降ります」ボタンなど、誰かが押してくれるでしょう。
また私は集中して映画を見ておりました。
ふと頭を上げると、バスは熊本駅を通過しています。
「え?うそやろ」
振り帰るとバス車内には誰も乗っていません。
完全に私1人です。
どうやら交通センターで、私以外の全員が降りたようです。
「ちょ!ちょー!止めてーな」
私はすぐに運転手に言います。
「いえ止められません」
聞き取りにくい小さな声で運転手が答えます。
「止められませんちゃうがな、いまここで止めたらえーねんて」
「いえ、停留所でしか止められません」
「まじめか!止めろや!」
「それは不可能なのです」
「てかいま信号で止まってるやん、降りるわ」
「いいえ、危険です」
「なにが危険やねん」
「もし事故に合われたら」
「なんで止まってるバスから降りるのに事故にあうねや」
この声の小さな運転手は、やたらとまじめなのでしょう。頑なに途中下車を拒否ってきます。停留所以外では降ろしてくれそうもないのです。
「ほならわかったわ、次の停留所てどこやねん」
「5kmほど先になります」
「はあ?そこから歩けと?」
「一応決まりですので」
そんな決まり事なんてどうでもいいわけです。
まず熊本駅の次の停留所は、バスの倉庫的な場所らしいのですが、そもそもそんなところで降りる客がいるはずがないのです。
客は熊本駅で絶対に降りるものなのです。
熊本駅で降りない客は怪しいのです。
寝ているか、映画に夢中になっているかなのです。
なんでそんな基本的な事に気づかないのでしょうか。
わかっているのにストレス発散のために、あえて黙って見逃しているのしょうか。
そして焦った客の顔を見てほくそ笑んでいるのしょう。
そういう事を考えていると、だんだんと腹が立ってきました。
「運転手さんの個人的な意見を聞かせてーな」
「はい?」
「自分が後で歩いて帰る道が、どんどん長くなっているのを、黙って見ている事の虚しさ、理解できんか?」
「いえ、できるんですけども、、」
「できるんけ、理解できるんやな」
「はぁ、まぁ」
「ほなら次の信号でドア開けろや、内緒にしたるから」
「それはできません」
「はあ?どんなけ真面目やねん!」
もうこの運転手は止まる気はさらさらないのでしょう。
何を言っても通じないようです。
「おの、お客さん」
「は?」
「帰り、バスを使われたらいかがでしょうか?」
「は?」
「バスを使われたら楽なのではないのでしょうか?」
「楽かしらんけど、それ自分とこの営業やん、絶対に嫌や」
「そういう意味じゃ、、」
「タダやったら乗ったるわ、なんで金払ろて乗らなあかんねや」
腹が立っているので、何を言われても腹が立ってきます。
結局、運転手は、最終の停留所の何故か少し手前で降ろしてくれました。
最後の最後で少しだけルールを破ったのです。
最後の最後になって結局ルールを破って停留所以外で降ろすのであれば、もっと最初に、こんなところまで来る前に、降ろしてくれても良かったんじゃないのかと、真剣に思いました。
でも彼なりの、精いっぱいのルール破りだったのかも知れません。
彼なりに頑張ってくれたのです。

自転車を押す少女

先日、駅からトボトボと歩いて帰宅しておりますと、私の斜め後ろを同じようにトボトボとついてくる女子がいました。
彼女は何故か自転車を押しています。
自転車なんて乗るためのものです。
わざわざ押すぐらいなら、無い方がよっぽど楽です。
もしかしたら私が邪魔で通れないのしょうか?
それはさすがに申し訳ないので、気を利かして道を譲ってみました。
すると彼女は何も言わず、私の少し前を歩き始めたのです。
しかしながら、いまだに自転車はおしています。
「はあ?いつまでおすねん」
ひょっとしたらパンクでもしているのでしょうか、いやチェーンが外れているのかも知れません。
いずれにしても、何らかのトラブルにより、彼女の自転車は操縦不能状態なのでしょう。
そうじゃないと、こんなにいつまでも自転車を押している女子がいるはずがないのです。

それから5分は歩いたでしょうか、彼女はいまだに私の少し前方を自転車を押しながら歩いています。
次の交差点に差し掛かり、急に彼女か立ち止まりました。
「ん?」
すると彼女はおもむろに自転車にまたがり、立ち漕ぎで猛スピードで行ってしまったのです。
「え?え?なんで?」
私は呆気に取られ、その場に立ち尽くしています。
彼女の背中がドンドン小さくなっていきます。
そしてついには見えなくなってしまったのでした。
何のためにここまでずっと押し続けてきたのでしょうか。
そしてなんでここからは立ち漕ぎなのでしょうか。
全く意味がわかりませんでした。
「どないやねん!」
誰もいない夜道、結構大きな声で言ってしまいました。